P I L L B O O K
低用量ピル(OC・LEP)、ミニピル、緊急避妊薬、黄体ホルモン剤。 学校では教えてくれなかった「からだの選択肢」を、 医学的な根拠にもとづいてまとめました。
医学的根拠にもとづく情報提供サイトです(診断ではありません)
ピルは「女性ホルモンによく似た成分」を毎日少しずつ飲むお薬。 からだに「今は排卵しなくていいよ」と伝えて、ホルモンの波をなだらかにします。
脳から出る「卵を育てて!」という指令(FSH・LH)をやさしく抑えて、排卵そのものをストップ。 これが避妊効果のいちばんの土台であり、排卵にともなうホルモンの乱高下=PMSや排卵痛がやわらぐ理由でもあります。
毎月ふかふかに厚くなる子宮内膜が、薄いままキープされます。 はがれる量が減る=経血が減る・生理痛のもとになるプロスタグランジンが減る。 過多月経や貧血、月経困難症がラクになる仕組みです。
子宮の入口(頸管)の粘液がねばっこくなり、精子が子宮の中へ進みにくくなります。 ①〜③の三段構えだから、正しく飲めば避妊の失敗率は年間0.3%程度まで下がります。
※ 妊娠率はCDC/WHOの避妊法一覧、がんリスク低下はコホート研究のメタ解析にもとづく代表値です。
中身はほとんど同じお薬なのに、名前も値段も違う。 この“ねじれ”を知っておくと、クリニックでの会話が一気にわかりやすくなります。
日本で経口避妊薬が承認されたのは1999年。世界より約40年も遅れました。 しかも「避妊は病気の治療ではない」という考え方から、避妊目的のピルは公的保険の対象外に。 その後、生理痛の治療薬として2008年以降に登場したのがLEPで、こちらは病気の治療なので保険がききます。
つまり「成分の差」ではなく「承認された目的の差」。 LEPを飲んでいる間も、排卵は同じように止まっているので、実際には避妊効果も得られます (ただし添付文書上の“効能”は治療なので、避妊目的だと説明された場合は自費になることがあります)。
エストロゲン量が0.02mg(20μg)のもの。吐き気やむくみが出にくく、血栓リスクもより低めですが、 不正出血がやや起きやすい傾向。すべてLEP=保険適用です。
エストロゲン量が0.03〜0.035mgのもの。出血のコントロールが安定しやすいのが持ち味。 OCの多くがこのグループです。
エストロゲン量が0.05mgのプラノバールなど。今は主に生理日移動や 不正出血の止血に短期間だけ使われます。吐き気が出やすいお薬です。
ピルの個性を決めているのは、中に入っている黄体ホルモン(プロゲスチン)の種類と エストロゲンの量。この2つで、得意なことも副作用の出かたも変わります。
| 世代 | 黄体ホルモン | 得意なこと | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | ノルエチステロン | 生理痛・過多月経に強い。出血が安定 | 男性ホルモン様の作用がやや残り、ニキビには不利なことも |
| 第2世代 | レボノルゲストレル | 不正出血が最も少ない。血栓リスクが相対的にいちばん低いグループ | ニキビ・多毛にはあまり向かない |
| 第3世代 | デソゲストレル | ニキビ・多毛の改善に定評。皮脂が減りやすい | 血栓リスクは第2世代より1.5〜2倍という報告 |
| 第4世代 | ドロスピレノン | むくみにくい・PMS/PMDDに強い・ニキビにも◎ | 血栓リスクは第2世代よりやや高め。カリウムを上げる薬との併用注意 |
| 新しい形 | エステトロール+ドロスピレノン | 天然型エストロゲン(E4)。凝固への影響が小さいと示唆 | 発売が新しく長期データはこれから。血栓ゼロではない |
※ 世代が新しい=えらい、ではありません。血栓リスクだけを見れば第2世代が最も低く、 「なにを一番よくしたいか」で選ぶのが正解です。
★の数は、添付文書・臨床試験・診療ガイドラインから読みとれる一般的な傾向をイメージ化したものです。 効き方には大きな個人差があり、順位を保証するものではありません。
いちばん変えたいことをタップしてみてください。 「どの成分が向いているか」と「診察室での伝え方」がわかります。
2025年6月、日本ではじめて黄体ホルモンだけの避妊薬(POP=ミニピル)「スリンダ錠28」が発売されました。 これまで「血栓が心配で飲めなかった人」に届いた、大きなニュースです。
| 合剤ピル(OC・LEP) | ミニピル(スリンダ) | |
|---|---|---|
| 成分 | エストロゲン+黄体ホルモン | 黄体ホルモンのみ |
| 避妊効果 | 高い | 高い(ほぼ同等) |
| 血栓症リスク | わずかに上がる | ほぼ上げないとされる |
| 生理痛・過多月経 | 治療薬として承認あり | 適応なし(結果的に軽くなる人はいる) |
| 出血の予測しやすさ | ◎ 休薬すると出血が来る | △ 不規則になりやすい |
| ニキビ・PMS | ◎ 得意な製品がある | ○ 個人差が大きい |
| お金 | LEPなら保険適用 | 自費のみ |
コンドームが破れた、外れた、避妊できなかった、望まない性行為だった。 そんなとき、72時間以内ならまだ手を打てます。責める気持ちより、まず時間を。
レボノルゲストレル1.5mgを1錠だけ飲みます。性行為から服用までの時間で、 防げる妊娠の割合(妊娠阻止率)が変わります。
※「妊娠阻止率」= 飲まなければ妊娠していたはずの人のうち、何%の妊娠を防げたかという指標です。 72時間を1分でも過ぎたら無意味、ということではありません。迷ったらとにかく相談を。
主な働きは排卵を止める・遅らせることです。精子は女性の体内で最長5日ほど生きられるので、 排卵をずらすことで受精そのものを避けます。
消退出血(約46%)、不正出血(約14%)、頭痛(約12%)、吐き気、だるさ。 多くは数日でおさまります。飲んで2時間以内に吐いてしまったら効果が不十分なので、 すぐ薬剤師や医師に連絡を。
3週間後に妊娠検査をするか、産婦人科を受診して妊娠していないことを確認します。 生理予定日が1週間以上ずれるのはよくあることですが、確認は必ず。授乳中の人は服用後24時間は授乳を控えます。
緊急避妊薬の効果は飲む前の1回ぶんだけ。同じ周期にまた性行為があれば、また妊娠の可能性があります。 次の生理までコンドームを使うか、この機会に低用量ピルやミニピルを始めるのがおすすめです。
「ピルは飲めない」「ピルでは効きが足りない」ときの強い味方。 エストロゲンを含まないので、血栓症のリスクをほとんど上げないのが共通の長所です。
ピルの副作用でいちばん重要なのが静脈血栓塞栓症(VTE)。 足の静脈にできた血のかたまりが肺に飛ぶと命に関わることがある、まれだけれど本物のリスクです。 だからこそ、数字で・症状で・対処で理解しておきましょう。
出典:日本産科婦人科学会「OC・LEPガイドライン」ほか。
頭文字をとって「エイクス」。ひとつでも当てはまったら、服用をやめて、その日のうちに医療機関へ。
おなかの激しい痛み。いつもの生理痛とは違う、と感じる強さ。
胸の痛み・息苦しさ・押しつぶされる感じ・急な息切れ。肺塞栓のサインかもしれません。
これまでにない激しい頭痛。しびれや、めまいをともなうとき。
見えにくい・視野が欠ける・ものが二重に見える、舌がもつれてしゃべりにくい。
ふくらはぎの痛み・むくみ・赤み・熱っぽさ。多くは片脚だけに出るのが特徴。
飲みはじめは、体が新しいホルモンのリズムに慣れる時期。 よくある小さな不調(マイナートラブル)は、多くが2〜3周期で自然に落ち着きます。
対処:寝る前や夕食後に飲むと感じにくくなります。空腹時を避けるのもコツ。 ひどいときは吐き気止めを出してもらえますし、エストロゲン量の少ない超低用量タイプに変える手も。
対処:いちばん多い相談。飲むのをやめないで続けるのが正解です。 途中でやめると出血はもっと長引きます。3周期たっても続くなら、成分を変えると落ち着くことが多いです。
対処:「ピルで太る」は研究では否定されています(体重増加は認められていません)。 気になるのは主に一時的な水分のむくみ。ドロスピレノン入りは水分をためにくい性質があります。
対処:休薬期間にエストロゲンが下がって起きる頭痛は、連続服用(休薬を減らす)で改善することが。 ただし前兆のある片頭痛はピル自体が禁忌なので、必ず申告してください。
対処:飲みはじめによくある反応で、多くは1〜2か月でおさまります。 ワイヤーのない下着でラクに。痛みが片側だけでしこりを触れるときは乳腺の受診を。
対処:PMSがラクになる人が多い一方、少数ですが気分が沈む人もいます(特に10代)。 我慢せず相談を。種類を変える、休薬を減らす、などで改善することがよくあります。
大規模な研究では、多くの人は変わらないか、むしろ上がります (妊娠の不安や生理痛から解放されるため)。ただし一部の人で低下が報告されており、 エストロゲンが肝臓で「SHBG」というたんぱく質を増やし、体内で働ける男性ホルモンが減ることが理由と考えられています。 この作用は抗アンドロゲン作用の強いドロスピレノン系で理論上は起きやすく、レボノルゲストレル系(第2世代)では残りやすいとされますが、 研究結果は一致していません。気になったら種類を変えてみる価値は十分あります。
気分の波の正体は「ホルモンの乱高下」。だからホルモンが平らになる飲み方ほど安定しやすくなります。 具体的には①1相性(毎日同じ量)②休薬期間が短い or 連続服用の2つ。 PMDD(重い月経前不快気分障害)に対しては、ドロスピレノン+超低用量エストロゲン(ヤーズ型)の 有効性がもっともよく研究されています。逆に落ち込みが強く出る人もいるので、 1〜2か月試して合わなければ変える、が原則です。
毎日ほぼ同じ時間に1錠。それだけ。でも「もしも」のときの動き方を知っておくと、よけいな不安がすーっと消えます。
いちばんの基本は、処方してくれた医師の指示どおりに飲みはじめることです。 お薬の種類や、その人の状況によって、すすめられる開始日は変わります。
気づいた時点ですぐ1錠。その日のぶんはいつもの時間に飲みます(1日2錠になってもOK)。 避妊効果は保たれます。
妊娠の可能性が上がります。すぐ処方元に連絡を。 添付文書では「その周期は中止し、次の生理を待って再開」とされていますが、 シートのどこで忘れたかで対応が変わります。7日間はコンドームを併用してください。
72時間以内なら緊急避妊薬という手があります。 自分を責める前に、薬局か産婦人科へ。時間が味方です。
添付文書の「禁忌」とWHOの医学的適格基準をもとにした、かんたんな確認です。 当てはまるものを選ぶだけ。結果はこの画面の中だけで計算され、どこにも送信されません。
「内診されるのが怖い」——それが一番のハードルだと思います。でも、大丈夫。
| 内容 | 目安 |
|---|---|
| LEP(保険3割・1シート) | 約600〜2,500円 |
| 初診料(保険3割) | 約1,000〜2,000円 |
| OC(自費・1シート) | 約2,000〜3,000円 |
| ミニピル スリンダ(自費) | 約3,000円前後〜 |
| 緊急避妊薬(薬局OTC) | 7,480円/後発品6,930円 |
| 緊急避妊薬(医療機関・自費) | 約6,000〜15,000円 |
| ミレーナ(保険3割) | 約1万円台/5年間 |
※ 施設によって差があります。自費診療は自由価格なので、事前にホームページで確認を。
いいえ。ピルは卵子の在庫を減らしません。むしろ子宮内膜症の進行を抑えることで、 将来の妊娠しやすさを守る方向に働きます。やめれば多くの人が1〜3か月で排卵が戻り、 妊娠率は同年代と変わらないことが確認されています。
研究では体重増加は認められていません(複数のランダム化比較試験のレビュー)。 飲みはじめの数か月に感じる変化は主に水分のむくみや食欲の一時的な変動で、多くは落ち着きます。 どうしても気になる場合は、水分をためにくいドロスピレノン製剤を相談してみてください。
定期的な休薬は必要ありません。むしろ中断と再開をくり返すと、 そのたびに血栓リスクが高い「飲みはじめ」の状態に戻ってしまいます。 健康状態に問題がなければ、定期受診を続けながら閉経近くまで飲み続けられます。
正確にはこうです。卵巣がん・子宮体がん・大腸がんのリスクは下がり、 その効果はやめたあとも長く続きます。一方で乳がんはわずかに上がる可能性が報告されていますが、 差は非常に小さく、やめて10年ほどで差は消えるとされています。子宮頸がんとの関連も指摘されていますが、 こちらはHPV感染が主な原因で、HPVワクチンと定期的な子宮頸がん検診のほうがずっと重要です。
たまりません。子宮内膜がそもそも厚くならないだけです。 連続服用で生理の回数を減らすことは、医学的に安全性が確認された飲み方です。 毎月の出血は「デトックス」ではなく、妊娠しなかった内膜がはがれているだけ。 経血が減ることは、貧血予防の面ではむしろ大きなメリットです。
防げません。クラミジア、淋菌、梅毒、HIVなどの感染は、ピルでは1ミリも防げません。 妊娠を防ぐならピルやミニピル、感染を防ぐならコンドーム。 両方使う「ダブルプロテクション」がいちばん確実です。
もちろん飲めます。日本で処方されている低用量ピルの多くは 「月経困難症の治療薬」で、性行為とは無関係のお薬です。 内診も原則必要ありません。生理がつらいなら、それだけで受診する理由になります。
飲みはじめた日によって変わります。 月経開始1〜5日目のあいだに始めた場合は、その周期から効果が期待できますが、 開始日によっては最初の7日間はコンドームなどの併用が必要です。 月経を待たずに始めた場合も同じく併用期間が必要になります。 「いつから避妊効果があるか」は、処方のときに必ず確認してください。 ミニピル(スリンダ)も考え方は同じです。