💊

知らないだけで、
選べないのはもったいない。

低用量ピル(OC・LEP)、ミニピル、緊急避妊薬、黄体ホルモン剤。 学校では教えてくれなかった「からだの選択肢」を、 医学的な根拠にもとづいてまとめました。

🌸 生理をラクに 🗓 周期をコントロール 🛡 確実な避妊 ✨ 肌・PMSにも

医学的根拠にもとづく情報提供サイトです(診断ではありません)

CHAPTER 01

そもそもピルって、なにをしてるの?

ピルは「女性ホルモンによく似た成分」を毎日少しずつ飲むお薬。 からだに「今は排卵しなくていいよ」と伝えて、ホルモンの波をなだらかにします。

🥚

① 排卵をおやすみ

脳から出る「卵を育てて!」という指令(FSH・LH)をやさしく抑えて、排卵そのものをストップ。 これが避妊効果のいちばんの土台であり、排卵にともなうホルモンの乱高下=PMSや排卵痛がやわらぐ理由でもあります。

🌸

② 子宮内膜を薄く

毎月ふかふかに厚くなる子宮内膜が、薄いままキープされます。 はがれる量が減る=経血が減る・生理痛のもとになるプロスタグランジンが減る。 過多月経や貧血、月経困難症がラクになる仕組みです。

🛡

③ 精子が入りにくく

子宮の入口(頸管)の粘液がねばっこくなり、精子が子宮の中へ進みにくくなります。 ①〜③の三段構えだから、正しく飲めば避妊の失敗率は年間0.3%程度まで下がります。

0.3%
正しく飲んだ1年間の
妊娠率(理想的な使用)
7%
飲み忘れも含めた
現実的な使用での妊娠率
13%
コンドームのみの場合の
現実的な妊娠率
約50%
10年以上の服用で下がる
卵巣がん・子宮体がんリスク

※ 妊娠率はCDC/WHOの避妊法一覧、がんリスク低下はコホート研究のメタ解析にもとづく代表値です。

🎁避妊だけじゃない。ピルでできること

  • 生理痛が軽くなる(月経困難症の第一選択のひとつ)
  • 経血量が減る(過多月経・鉄欠乏性貧血の改善)
  • 生理不順が整う(28日ごとに出血が来る予定表になる)
  • PMS・PMDDがラクになる(特にドロスピレノン製剤)
  • ニキビ・多毛の改善(男性ホルモンの働きを抑える)
  • 子宮内膜症の進行をおさえる(痛みの再発予防)
  • 卵巣がん・子宮体がん・大腸がんのリスク低下
  • 生理日をずらせる(旅行・試験・大会・結婚式)
ここ、大事。 「ピル=避妊のくすり」というイメージが強いけれど、日本で処方されている低用量ピルの多くは 月経困難症・子宮内膜症の“治療薬”として保険がきくお薬です。 性行為の有無に関係なく、生理がつらい人みんなの選択肢だと思ってください。
CHAPTER 02

日本だけの不思議、「OC」と「LEP」

中身はほとんど同じお薬なのに、名前も値段も違う。 この“ねじれ”を知っておくと、クリニックでの会話が一気にわかりやすくなります。

OC / Oral Contraceptives

避妊のためのピル

  • 目的は避妊。国から「避妊薬」として承認されています
  • 自費(保険がきかない)。1シート2,000〜3,000円前後が目安
  • マーベロン、トリキュラー、ラベルフィーユ、ファボワール など
  • 受診料も自費。オンライン診療で扱うのはほぼこのグループ
LEP / Low dose Estrogen Progestin

治療のためのピル

  • 目的は月経困難症・子宮内膜症の治療。「治療薬」として承認
  • 保険適用(3割負担)。1シート約600〜2,500円
  • ルナベル、フリウェル、ヤーズ、ヤーズフレックス、ジェミーナ、ドロエチ、アリッサ など
  • 診察・検査にも保険がきくので、トータルの負担が軽い

🔍なぜ分かれているの?(背景のはなし)

日本で経口避妊薬が承認されたのは1999年。世界より約40年も遅れました。 しかも「避妊は病気の治療ではない」という考え方から、避妊目的のピルは公的保険の対象外に。 その後、生理痛の治療薬として2008年以降に登場したのがLEPで、こちらは病気の治療なので保険がききます。

つまり「成分の差」ではなく「承認された目的の差」。 LEPを飲んでいる間も、排卵は同じように止まっているので、実際には避妊効果も得られます (ただし添付文書上の“効能”は治療なので、避妊目的だと説明された場合は自費になることがあります)。

おサイフの話。 生理痛・過多月経・PMSでつらいなら、まずは婦人科で相談を。 「月経困難症」と診断がつけばLEPを保険で処方してもらえて、 自費のOCより月々の負担が半分以下になることもあります。 我慢して市販の鎮痛薬を買い続けるより安くなるケースも珍しくありません。
超低用量

エストロゲン量が0.02mg(20μg)のもの。吐き気やむくみが出にくく、血栓リスクもより低めですが、 不正出血がやや起きやすい傾向。すべてLEP=保険適用です。

低用量

エストロゲン量が0.03〜0.035mgのもの。出血のコントロールが安定しやすいのが持ち味。 OCの多くがこのグループです。

中用量

エストロゲン量が0.05mgのプラノバールなど。今は主に生理日移動や 不正出血の止血に短期間だけ使われます。吐き気が出やすいお薬です。

CHAPTER 03

ピル図鑑 〜それぞれの“性格”〜

ピルの個性を決めているのは、中に入っている黄体ホルモン(プロゲスチン)の種類エストロゲンの量。この2つで、得意なことも副作用の出かたも変わります。

🧬まず「世代」を知るとスッキリ

世代黄体ホルモン得意なこと気をつけること
第1世代ノルエチステロン生理痛・過多月経に強い。出血が安定男性ホルモン様の作用がやや残り、ニキビには不利なことも
第2世代レボノルゲストレル不正出血が最も少ない。血栓リスクが相対的にいちばん低いグループニキビ・多毛にはあまり向かない
第3世代デソゲストレルニキビ・多毛の改善に定評。皮脂が減りやすい血栓リスクは第2世代より1.5〜2倍という報告
第4世代ドロスピレノンむくみにくい・PMS/PMDDに強い・ニキビにも◎血栓リスクは第2世代よりやや高め。カリウムを上げる薬との併用注意
新しい形エステトロール+ドロスピレノン天然型エストロゲン(E4)。凝固への影響が小さいと示唆発売が新しく長期データはこれから。血栓ゼロではない

※ 世代が新しい=えらい、ではありません。血栓リスクだけを見れば第2世代が最も低く、 「なにを一番よくしたいか」で選ぶのが正解です。

★の数は、添付文書・臨床試験・診療ガイドラインから読みとれる一般的な傾向をイメージ化したものです。 効き方には大きな個人差があり、順位を保証するものではありません。

海外のピルについて。 ヤスミン、ダイアン、マーシロンなど、国内未承認のピルを個人輸入で扱う情報も見かけます。 個人輸入品は成分の保証がなく、副作用が起きても医薬品副作用被害救済制度が使えません。 国内で処方されるものを選ぶのが安全です。
CHAPTER 04

お悩み別・わたしに合うのはどのタイプ?

いちばん変えたいことをタップしてみてください。 「どの成分が向いているか」と「診察室での伝え方」がわかります。

選び方のコツ。 ピルは「合うものに出会うまで、変えていい」お薬です。 効果の判定はふつう3周期(約3か月)。それでもつらい症状が残るなら、 別の成分に変えるだけでウソのようにラクになることがあります。遠慮なく相談してください。
CHAPTER 05

新登場!エストロゲンを含まないピル

2025年6月、日本ではじめて黄体ホルモンだけの避妊薬(POP=ミニピル)「スリンダ錠28」が発売されました。 これまで「血栓が心配で飲めなかった人」に届いた、大きなニュースです。

スリンダ錠28(ドロスピレノン4mg)

エストロゲンフリーという選択

  • 血栓症のおもな引き金であるエストロゲンを含まない
  • 実薬24錠+プラセボ4錠を、毎日同じ時間に飲み続ける
  • 排卵をしっかり抑えるタイプで、避妊効果は合剤ピルとほぼ同等
  • 従来の海外ミニピルは「3時間の飲み忘れでアウト」だったが、 スリンダは翌日までに気づけば飲めばOKと設計されている
  • 避妊が目的なので自費(クリニックにより月3,000円前後〜)

こんな人の選択肢に

  • 喫煙している人(35歳以上×1日15本以上は合剤ピルが禁忌)
  • 40歳以上の人
  • 授乳中の人(母乳量に影響しにくい)
  • 前兆のある片頭痛がある人(合剤ピルは使えません)
  • 合剤ピルで吐き気・むくみ・頭痛がつらかった人
正直な注意点: 国内の臨床試験では不正性器出血が約9割に見られました。多くは少量でだんだん落ち着きますが、 「いつ出血するか読みにくい」のが最大の弱点です。生理痛や過多月経の“治療”としては承認されていません。

⚖️合剤ピル(OC・LEP)とミニピル、どうちがう?

合剤ピル(OC・LEP)ミニピル(スリンダ)
成分エストロゲン+黄体ホルモン黄体ホルモンのみ
避妊効果高い高い(ほぼ同等)
血栓症リスクわずかに上がるほぼ上げないとされる
生理痛・過多月経治療薬として承認あり適応なし(結果的に軽くなる人はいる)
出血の予測しやすさ◎ 休薬すると出血が来る△ 不規則になりやすい
ニキビ・PMS◎ 得意な製品がある○ 個人差が大きい
お金LEPなら保険適用自費のみ
CHAPTER 06

緊急避妊薬(アフターピル)は「間に合う」お薬

コンドームが破れた、外れた、避妊できなかった、望まない性行為だった。 そんなとき、72時間以内ならまだ手を打てます。責める気持ちより、まず時間を。

⏱ 時間との勝負

早いほど、効く

レボノルゲストレル1.5mgを1錠だけ飲みます。性行為から服用までの時間で、 防げる妊娠の割合(妊娠阻止率)が変わります。

24時間以内約95%
25〜48時間約85%
49〜72時間約58%

※「妊娠阻止率」= 飲まなければ妊娠していたはずの人のうち、何%の妊娠を防げたかという指標です。 72時間を1分でも過ぎたら無意味、ということではありません。迷ったらとにかく相談を。

2026年2月〜 大きく変わりました

処方箋なしで買えるように

  • 日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ」が2026年2月2日に発売(希望小売価格7,480円・税込)
  • 2026年3月には後発品「レソエル72」(6,930円・税込)も登場
  • 買えるのは研修を受けた薬剤師がいる登録薬局のみ。厚生労働省のサイトで一覧が公開されています
  • 薬剤師の目の前でその場で飲みます(持ち帰り不可)。プライバシーに配慮した個室などで対応
  • 法律上の年齢制限や保護者の同意は不要。ただし16歳未満は薬局では販売せず、産婦人科の受診をすすめられます
医療機関という道も。 夜間・休日で薬局が閉まっている、費用を抑えたい、その後の避妊も相談したい——そんなときは産婦人科へ。 自費で6,000〜1万円台が目安ですが、性犯罪被害の場合は ワンストップ支援センター(全国共通 #8891)を通じて公費で対応してもらえる制度があります。

🔬どうやって効くの?(誤解されがちなところ)

主な働きは排卵を止める・遅らせることです。精子は女性の体内で最長5日ほど生きられるので、 排卵をずらすことで受精そのものを避けます。

とても大事: 緊急避妊薬はすでに成立した妊娠を終わらせる薬(中絶薬)ではありません。 着床が完了した妊娠には効きませんし、飲んでしまっても胎児に悪影響を与えるという報告はありません。 「妊娠していたらどうしよう」と怖がって飲まない、という判断はしなくて大丈夫です。

よくある副作用

消退出血(約46%)、不正出血(約14%)、頭痛(約12%)、吐き気、だるさ。 多くは数日でおさまります。飲んで2時間以内に吐いてしまったら効果が不十分なので、 すぐ薬剤師や医師に連絡を。

飲んだあとにすること

3週間後に妊娠検査をするか、産婦人科を受診して妊娠していないことを確認します。 生理予定日が1週間以上ずれるのはよくあることですが、確認は必ず。授乳中の人は服用後24時間は授乳を控えます。

そのあとの避妊

緊急避妊薬の効果は飲む前の1回ぶんだけ。同じ周期にまた性行為があれば、また妊娠の可能性があります。 次の生理までコンドームを使うか、この機会に低用量ピルやミニピルを始めるのがおすすめです。

知っておきたい豆知識。 海外では「性行為後120時間まで使えるウリプリスタール(ella)」が主流のひとつですが、 日本では未承認です。また、中用量ピルを2回飲む「ヤッペ法」は、効果が劣り吐き気も強いため、 今は積極的にはすすめられていません。
CHAPTER 07

もうひとつの主役、黄体ホルモン剤

「ピルは飲めない」「ピルでは効きが足りない」ときの強い味方。 エストロゲンを含まないので、血栓症のリスクをほとんど上げないのが共通の長所です。

ジエノゲスト(ディナゲスト ほか)

子宮内膜症の治療の中心

  • 1mg錠は子宮内膜症・子宮腺筋症、0.5mg錠は月経困難症に保険適用
  • 子宮内膜の増殖を強力に抑え、痛みの原因である病変を小さくする
  • ピルが使えない人(血栓リスクが高い、片頭痛など)でも使えることが多い
  • 副作用は不正出血(特に最初の数か月)、ほてり、頭痛。長期では骨密度への配慮も必要
  • 避妊薬ではありません。避妊効果は保証されていないので、必要ならコンドームを併用
ノルエチステロン(ノアルテン)

生理日をずらしたいときに

  • 旅行・試験・大会・結婚式に合わせて生理を遅らせるのによく使われます
  • 遅らせる場合:生理予定日の5〜7日前から飲みはじめ、ずらしたい日まで継続。やめて2〜3日で出血が来ます
  • 早める場合:前の生理が始まって5日目ごろから10日以上飲み、やめると数日で出血。計画は1か月以上前から
  • 機能性子宮出血や無月経の治療にも使われます
ジドロゲステロン(デュファストン)

やさしい黄体ホルモン

  • 黄体機能不全、月経周期の異常、切迫流産などに使われます
  • 排卵を抑えないので、妊娠を目指しながら使えるのが特徴
  • 男性ホルモン様の作用がほとんどなく、副作用が比較的少ない
レボノルゲストレル放出子宮内システム(ミレーナ)

飲まないという選択

  • 小さな器具を子宮内に入れ、黄体ホルモンを少しずつ放出。最長5年効果が続きます
  • 過多月経・月経困難症の治療なら保険適用(避妊目的だと自費で4〜6万円程度)
  • 経血が大幅に減り、生理が来なくなる人も。全身に回るホルモン量がごく少ない
  • 毎日の飲み忘れから解放される。授乳中でも使える
メドロキシプロゲステロン(ヒスロン・プロベラ)は、 無月経や機能性子宮出血のときに、生理を起こしたり出血を止めたりする目的で短期間使われます。 「生理が3か月来ない」ときに婦人科で出されることが多いお薬です。
CHAPTER 08

血栓症のはなしを、こわがらずに、正確に。

ピルの副作用でいちばん重要なのが静脈血栓塞栓症(VTE)。 足の静脈にできた血のかたまりが肺に飛ぶと命に関わることがある、まれだけれど本物のリスクです。 だからこそ、数字で・症状で・対処で理解しておきましょう。

📊1年間に1万人あたり、何人が発症する?

ピルを飲んでいない女性1〜5人
低用量ピルを飲んでいる女性3〜9人
妊娠中5〜20人
産後12週間40〜65人

出典:日本産科婦人科学会「OC・LEPガイドライン」ほか。

読み解きかた。 たしかにピルは血栓症のリスクを2倍前後に上げます。これは事実です。 でも元の数字がとても小さいので、上がったあとでも妊娠中よりも、産後よりも低い。 「妊娠を避けるための薬のリスク」は、「避けたかった妊娠そのもののリスク」より小さい、という関係になっています。 リスクをゼロにする選択肢は存在しません。比べたうえで選ぶのがフェアな判断です。

リスクが高いのはいつ?

  • 飲みはじめの3〜4か月がいちばん高い。1年を過ぎると下がって安定します
  • やめて時間をあけてから再開すると、また「飲みはじめ」と同じ高さに戻る。中断・再開をくり返さないほうが安全
  • 第3・第4世代は第2世代(レボノルゲストレル)よりやや高いという報告があります
  • 飛行機などで長時間座りっぱなしのとき、脱水のとき、手術・骨折で動けないときは要注意

🍀自分でできる予防

  • こまめに水分をとる(血液が濃くならないように)
  • 1〜2時間に一度は立つ・足首を回す・ふくらはぎを動かす
  • 禁煙する。タバコは血栓リスクを大きく押し上げます
  • 手術の予定が決まったら、事前に医師へピル服用を申告(術前4週・術後2週は休むのが原則)
  • 定期的に受診し、血圧と体重をチェック

🚨この5つの症状が出たら、すぐ受診(ACHES)

頭文字をとって「エイクス」。ひとつでも当てはまったら、服用をやめて、その日のうちに医療機関へ

A
Abdominal pain

おなかの激しい痛み。いつもの生理痛とは違う、と感じる強さ。

C
Chest pain

胸の痛み・息苦しさ・押しつぶされる感じ・急な息切れ。肺塞栓のサインかもしれません。

H
Headache

これまでにない激しい頭痛。しびれや、めまいをともなうとき。

E
Eye / speech

見えにくい・視野が欠ける・ものが二重に見える、舌がもつれてしゃべりにくい。

S
Severe leg pain

ふくらはぎの痛み・むくみ・赤み・熱っぽさ。多くは片脚だけに出るのが特徴。

受診するときのコツ: 必ず「低用量ピル(またはLEP)を飲んでいます」と最初に伝えてください。 この一言があるかないかで、血栓症を疑って検査(Dダイマー、下肢エコー、造影CTなど)に進むスピードが変わります。 夜間・休日なら救急外来へ。ためらわなくて大丈夫です。 判断に迷ったら「#7119(救急安心センター)」に電話して相談することもできます。
CHAPTER 09

最初の3か月を乗りこえるコツ

飲みはじめは、体が新しいホルモンのリズムに慣れる時期。 よくある小さな不調(マイナートラブル)は、多くが2〜3周期で自然に落ち着きます

🤢

吐き気・胃のむかつき

対処:寝る前や夕食後に飲むと感じにくくなります。空腹時を避けるのもコツ。 ひどいときは吐き気止めを出してもらえますし、エストロゲン量の少ない超低用量タイプに変える手も。

🩸

不正出血(ダラダラ続く)

対処:いちばん多い相談。飲むのをやめないで続けるのが正解です。 途中でやめると出血はもっと長引きます。3周期たっても続くなら、成分を変えると落ち着くことが多いです。

🎈

むくみ・体重が気になる

対処:「ピルで太る」は研究では否定されています(体重増加は認められていません)。 気になるのは主に一時的な水分のむくみ。ドロスピレノン入りは水分をためにくい性質があります。

🤕

頭痛

対処:休薬期間にエストロゲンが下がって起きる頭痛は、連続服用(休薬を減らす)で改善することが。 ただし前兆のある片頭痛はピル自体が禁忌なので、必ず申告してください。

💗

胸のはり・痛み

対処:飲みはじめによくある反応で、多くは1〜2か月でおさまります。 ワイヤーのない下着でラクに。痛みが片側だけでしこりを触れるときは乳腺の受診を。

😔

気分の落ち込み・イライラ

対処:PMSがラクになる人が多い一方、少数ですが気分が沈む人もいます(特に10代)。 我慢せず相談を。種類を変える、休薬を減らす、などで改善することがよくあります。

💄「性欲」「気分」のこと、正直に

性欲は下がるの?

大規模な研究では、多くの人は変わらないか、むしろ上がります (妊娠の不安や生理痛から解放されるため)。ただし一部の人で低下が報告されており、 エストロゲンが肝臓で「SHBG」というたんぱく質を増やし、体内で働ける男性ホルモンが減ることが理由と考えられています。 この作用は抗アンドロゲン作用の強いドロスピレノン系で理論上は起きやすく、レボノルゲストレル系(第2世代)では残りやすいとされますが、 研究結果は一致していません。気になったら種類を変えてみる価値は十分あります

気分を上げてくれるのは?

気分の波の正体は「ホルモンの乱高下」。だからホルモンが平らになる飲み方ほど安定しやすくなります。 具体的には①1相性(毎日同じ量)②休薬期間が短い or 連続服用の2つ。 PMDD(重い月経前不快気分障害)に対しては、ドロスピレノン+超低用量エストロゲン(ヤーズ型)の 有効性がもっともよく研究されています。逆に落ち込みが強く出る人もいるので、 1〜2か月試して合わなければ変える、が原則です。

やめどきの目安はある? 健康なら、閉経までのみ続けても問題ないとされています(一般に50歳前後まで)。 定期的な休薬は必要ありませんし、休むほうが血栓リスクの面ではむしろ不利になることも。 妊娠を望むときは飲むのをやめれば、多くの人が1〜3か月で排卵が戻ります
CHAPTER 10

のみ方と、飲み忘れたときの正解

毎日ほぼ同じ時間に1錠。それだけ。でも「もしも」のときの動き方を知っておくと、よけいな不安がすーっと消えます。

🚀いつから飲みはじめる?

いちばんの基本は、処方してくれた医師の指示どおりに飲みはじめることです。 お薬の種類や、その人の状況によって、すすめられる開始日は変わります。

基本は「月経が始まって1〜5日目」から 国内のガイドラインでは、月経開始1〜5日目のあいだに飲みはじめる方法が基本とされています。 この時期に始めれば、その周期から避妊効果が期待できます。 ただし開始日によっては、最初の7日間はコンドームなどの併用をすすめられることがあります。
「この出血、本当に生理?」と思ったら 月経なのか不正出血なのかは、自分では見分けがつきにくいものです。 迷ったまま自己判断で始めず、処方元に電話して確認してください。 開始日がずれると、避妊効果が出るタイミングも変わります。
そのほかの始め方もあります 妊娠していないことを確認したうえで、月経を待たずに始める方法(クイックスタート)などもあります。 必要な追加避妊の期間が変わるので、これも必ず医師の指示のもとで
受診のときに、この2つを聞いておく1錠目をいつ飲むか ②最初の何日間、ほかの避妊が必要か。 この2つをメモして帰れば、迷わずスタートできます。

📅シートの読み方

  • 21錠タイプ:21日飲んで7日休む。休薬中に出血が来る
  • 28錠タイプ:うち7錠(または4錠)は成分の入っていないプラセボ。飲み忘れ防止のためのお守り
  • 24+4タイプ(ヤーズ、ドロエチ、アリッサ、スリンダ):休みが4日と短く、ホルモンの落差が小さい
  • フレキシブル(ヤーズフレックス最大120日/ジェミーナ77日):連続して飲み、生理の回数を年に3〜4回まで減らせます
休薬中に来る出血は「消退出血」といって、ふつうの生理よりずっと少なくて短いのが正常。 量が減っても「たまっている」わけではないので心配いりません。

飲み忘れたときのフローチャート

24時間以内に気づいた

気づいた時点ですぐ1錠。その日のぶんはいつもの時間に飲みます(1日2錠になってもOK)。 避妊効果は保たれます。

2日以上つづけて忘れた

妊娠の可能性が上がります。すぐ処方元に連絡を。 添付文書では「その周期は中止し、次の生理を待って再開」とされていますが、 シートのどこで忘れたかで対応が変わります。7日間はコンドームを併用してください。

忘れた前後に性行為があった

72時間以内なら緊急避妊薬という手があります。 自分を責める前に、薬局か産婦人科へ。時間が味方です。

吸収されないと効きません。 飲んで2時間以内に吐いてしまった、または激しい下痢が続いているときは、 薬が吸収されていない可能性があります。もう1錠飲む(予備シートから)などの対応が必要なので、処方元に相談を。
飲み合わせ注意:抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトインなど)、結核の薬(リファンピシン)、 一部のHIV・C型肝炎の薬、サプリのセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は ピルの効果を弱めます。飲んでいる薬・サプリは必ず伝えてください。
CHAPTER 11

わたし、ピル飲めるのかな?セルフチェック

添付文書の「禁忌」とWHOの医学的適格基準をもとにした、かんたんな確認です。 当てはまるものを選ぶだけ。結果はこの画面の中だけで計算され、どこにも送信されません。

1年齢を教えてください

2タバコを吸いますか?(加熱式・電子タバコも含みます)

3身長と体重(BMIの確認に使います・任意)

4今のからだの状況にあてはまるものは?

5次のなかに、当てはまるものはありますか?(複数選択可)

エストロゲンを含むピルを使えない可能性がある項目です。ひとつもなければ、そのまま次へ。

6こちらはどうですか?(複数選択可)

使えないわけではないけれど、診察のときに必ず伝えてほしい項目です。

このチェックは診断ではありません。 あくまで「相談の材料」を作るためのものです。最終的に飲めるかどうかは、 血圧測定や問診を含めた医師の診察で決まります。「たぶんダメだろうな」と自己判断であきらめないでください。 エストロゲンが使えなくても、ミニピル・ジエノゲスト・ミレーナなどほかの道がちゃんとあります
CHAPTER 12

はじめての受診、こわくないよ

「内診されるのが怖い」——それが一番のハードルだと思います。でも、大丈夫。

🏥当日の流れ

問診票を書く生理の状況、困っていること、持病、飲んでいる薬、家族の病歴など。事前に書き出しておくとスムーズ。
血圧・体重をはかるピルを飲むうえで欠かせないチェックです。
医師と話す「生理痛がひどくて日常生活に支障がある」と伝えると、月経困難症として保険診療になる道がひらけます。
内診は必須ではありませんピルを出すだけなら内診なしのことも多いです。不安なら「内診は避けたい」と言ってOK。必要な場合は理由を説明してもらえます。
処方・次回の予約はじめてのときは、副作用や血栓症のサインが出ていないかを確認するため、 まず1シートだけという施設がほとんどです。「体に合っているか」を一度みてもらうための、大事なワンクッションだと思ってください。 続けて飲めることがわかったら、2〜3シートずつまとめて処方してもらえることもあります。 ここは施設ごとに方針が違うので、通いやすさが気になるなら 「慣れてきたら、まとめて処方してもらえますか?」と聞いてみてください。

💰お金のはなし(目安)

内容目安
LEP(保険3割・1シート)約600〜2,500円
初診料(保険3割)約1,000〜2,000円
OC(自費・1シート)約2,000〜3,000円
ミニピル スリンダ(自費)約3,000円前後〜
緊急避妊薬(薬局OTC)7,480円/後発品6,930円
緊急避妊薬(医療機関・自費)約6,000〜15,000円
ミレーナ(保険3割)約1万円台/5年間

※ 施設によって差があります。自費診療は自由価格なので、事前にホームページで確認を。

オンライン診療もあります。スマホの問診と診察でピルが自宅に届くサービスは便利ですが、 血圧が測れない・多くは自費という弱点も。生理痛がつらい人は、 一度は対面で受診して保険診療の道を確かめるのがおすすめです。

💬そのまま使える「伝え方」フレーズ集

  • 「生理痛で鎮痛薬を飲んでも学校や仕事を休むことがあります」
  • 「経血が多くて1〜2時間ごとにナプキンを替えます。レバーのような塊も出ます」
  • 「生理前の1週間、気持ちが不安定で人間関係がつらいです」
  • 確実に避妊したいので、ピルを検討しています」
  • ニキビも気になるので、肌に良い種類があれば教えてください」
  • むくみにくい種類気分が落ちにくい種類を希望します」
中高生でも、保護者の同意なしにピルを処方してもらえるクリニックはあります。 費用や通いやすさが不安なら、まずは電話やホームページで確認してみてください。 「思春期外来」「10代歓迎」と書いてあるところは特に相談しやすいです。
CHAPTER 13

よくある「それ、誤解です」

ピルを飲むと将来 妊娠しにくくなる?

いいえ。ピルは卵子の在庫を減らしません。むしろ子宮内膜症の進行を抑えることで、 将来の妊娠しやすさを守る方向に働きます。やめれば多くの人が1〜3か月で排卵が戻り、 妊娠率は同年代と変わらないことが確認されています。

ピルで太るって本当?

研究では体重増加は認められていません(複数のランダム化比較試験のレビュー)。 飲みはじめの数か月に感じる変化は主に水分のむくみや食欲の一時的な変動で、多くは落ち着きます。 どうしても気になる場合は、水分をためにくいドロスピレノン製剤を相談してみてください。

ずっと飲んでいて大丈夫? 休薬しなくていいの?

定期的な休薬は必要ありません。むしろ中断と再開をくり返すと、 そのたびに血栓リスクが高い「飲みはじめ」の状態に戻ってしまいます。 健康状態に問題がなければ、定期受診を続けながら閉経近くまで飲み続けられます。

がんのリスクは上がるの?

正確にはこうです。卵巣がん・子宮体がん・大腸がんのリスクは下がり、 その効果はやめたあとも長く続きます。一方で乳がんはわずかに上がる可能性が報告されていますが、 差は非常に小さく、やめて10年ほどで差は消えるとされています。子宮頸がんとの関連も指摘されていますが、 こちらはHPV感染が主な原因で、HPVワクチンと定期的な子宮頸がん検診のほうがずっと重要です。

生理が来ないと、体に悪いものがたまらない?

たまりません。子宮内膜がそもそも厚くならないだけです。 連続服用で生理の回数を減らすことは、医学的に安全性が確認された飲み方です。 毎月の出血は「デトックス」ではなく、妊娠しなかった内膜がはがれているだけ。 経血が減ることは、貧血予防の面ではむしろ大きなメリットです。

ピルを飲んでいれば性感染症も防げる?

防げません。クラミジア、淋菌、梅毒、HIVなどの感染は、ピルでは1ミリも防げません。 妊娠を防ぐならピルやミニピル、感染を防ぐならコンドーム。 両方使う「ダブルプロテクション」がいちばん確実です。

処女でも飲めますか? 性行為の予定がなくても?

もちろん飲めます。日本で処方されている低用量ピルの多くは 「月経困難症の治療薬」で、性行為とは無関係のお薬です。 内診も原則必要ありません。生理がつらいなら、それだけで受診する理由になります。

飲みはじめたら、すぐ避妊効果がありますか?

飲みはじめた日によって変わります。 月経開始1〜5日目のあいだに始めた場合は、その周期から効果が期待できますが、 開始日によっては最初の7日間はコンドームなどの併用が必要です。 月経を待たずに始めた場合も同じく併用期間が必要になります。 「いつから避妊効果があるか」は、処方のときに必ず確認してください。 ミニピル(スリンダ)も考え方は同じです。